歯科恐怖症:B子の歯科体験記(1)

■昔からのかかりつけ歯医者さん

B子の歯科恐怖症のひどさったらない。

E太も慎重でこわがりな子だったので、はじめての歯医者さんの対応が違っていたら苦労していたのかもしれない。
彼の場合はラッキーだった。
私自身が子どもの頃からお世話になっていた歯科医院で、
顔が大きくて迫力あるおじいちゃん先生が、じっくり怖がる間もない手際のよさで、ちょちょいのちょいっと治療してくれたのだった。
見た感じ怖そうなのに中身はとてもやさしい。
終わってからキシリトールかなんかの飴くれて。
人工甘味料は体によろしくないという話もあるが、この場合はよし。

今どきの当たり前の歯医者さんのイメージとは程遠い、雑居ビルの4階、歯科医師の夫婦が、ふたりだけでやっている医院。助手も受付の人もいない。
中学生くらいの頃よくお世話になっていたが、
私自身も相当の歯医者嫌いで、4階までの階段を昇るのも嫌々だったし、
待合室での待ち時間はお腹が痛くなるほど怖かった。
でも、家族ぐるみでずっと信頼していた歯医者さん。

B子もあの先生に診てもらえていたら、違ったんじゃないかと何度も思う。
3.11をきっかけに離れてしまった街に、あの先生はいた。
そして、今はもう、どうやら引退されてしまった。

移住した先で、一から安心できるかかりつけを探すというのは、本当にストレス。
たとえば小児科だって。
アレルギー持ちのB子、移住前はかゆみ止めのお気に入りのシロップ薬があって、順調に飲んでいたのに、
その薬がそんなに一般的なものではなかったらしく、こちらで具体的に薬の名前を伝えても処方してもらえない。
こだわりが強いから、気に入ったものだと順調なんだけど・・・理解もされず。
かゆみがあれば夜眠りが浅くなり機嫌も悪くなる。
お世話になっていた先生が懐かしい・・・。

■初めての虫歯

で、歯医者。
B子は移住後の保育園4歳児クラスの健診で虫歯があると初めていわれた。
それまで虫歯といわれたことがなかったために、自分は無縁なんだと自信があったようで、
「まさか私が虫歯なんて」というショックのあまり後部座席のチャイルドシートでさめざめと涙を流しながら歯科医院へ。
しかし結局、症状が軽いのでブラッシングだけで治療は不要といわれ、削らずに済んだ。

■小学生になってから近所の歯科受診

その後はしばらく虫歯は発見されず、小学生3年生くらいになってから指摘があったので近所の歯科医院へ行ったが、嘔吐反射が強い子なのにレントゲンをいっぱい、泣きながら撮られて、それでうんざりしたので治療にはとりかかれず。
「何度か慣らしが必要ですね」とのことで、仕事を早退するなどして予約を取って行っても歯みがきだけで帰るというのが2、3回。
まだその頃は、その移住前のおじいちゃん先生のような手際のよさを夢見ていたので、「歯みがきだけで2回も3回も来ないとならないって何?」と腹立たしく、B子もいやがるので、行けなくなってしまった。
でも、放置するわけにもいかないよね、と、近所のもう一件の歯医者に行ってみるが、あの先生は嫌、という。

■都市部の「子ども歯科」

じゃあ、都市部のほうの「子ども歯科」に行ってみようか?と予約して行ってみる。

私は、日本では気軽にレントゲン撮影をしすぎると聞いたことがあるので、
必ず「レントゲンはなるべく撮らずにお願いします」と伝えることにしている。
第一、B子の場合、試す歯科医院ごとに初回に撮影を繰り返していたら、治療にたどり着かないのにそれこそ無駄な被曝ばかりをすることになってしまう。
まず学校の健診で見つかった虫歯の治療なら目視できるはずで、レントゲン撮影をしなかったために虫歯を見落としたということがあってもそれはもちろんこちらも了解する話。
しかし、一軒目の「子ども歯科」の女性医師は「レントゲンを撮らないと治療ができないですね」の一点張りで、お世話になるのをあきらめる。
もう一軒、子ども歯科にトライ。こちらは先生が移住の方で、話がわかる。レントゲンへの拒否感も理解してくださり、3回くらいは行った。
全然気が進まないB子をなだめたりすかしたりしながらなんとか連れて行って「慣らし診察」を繰り返していたが、私が業を煮やして「わざわざ時間を作ってきているので、ちょっとでも治療を進めてください」とお願いした。早くしなくちゃ痛みが出たらどうするんだという焦りもあったし、くたびれていたから。
当時のB子は、「麻酔でちょっとだけちくっとするけど」との説明の「ちくっと」が怖い、
他人の治療で聞こえてくる削る音も怖い、自分の歯が削られるなんて恐ろしい、で、すべて拒否の姿勢だった。
で、保護者に追い詰められた歯科医の先生、仕方なく、機械で削るのも麻酔の針も嫌なら、麻酔なしで
手で持った針みたいな道具で削るけど、と提案して、がりがりやってみてくださった。
が、後にB子が語るところによれば、これが痛かったんだって。
ここも予約を入れてももうB子の拒否により行けなくなってしまった。

■あの手この手からの小休止

ここまでで5軒を経験。
何軒も巡る間に、自宅では、怒ったり、懇願したり、ごほうびを提案してみたり、説得したり、歯医者さんは敵じゃない、痛くならないようにしてくれる味方なんだ、などと口頭はもちろん、ノートに書いたりもしながら説明した。
E太も先輩として「早めに治療したほうがいいよ」などと説得に加わってくれたりもした。
思いつく限りのことはしたが、行けない。
恐怖の整理がつかない。

もう、打つ手なし。お互いくたびれ果てた。
ここは、いったんお休みすることにした。
痛くなれば行かなきゃと思うだろう。

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