前の記事からの続きです。
初診まで
夏休みが明け、学校が始まってもモチベーションが上がらないE太。
しかし、ずっと休んでいれば単位取得が危うくなる。
いやいやながら学校へ行こうとするが、バスには間に合わない。
バスに乗り遅れたら同じ方向に出勤する私が車に乗せて行く。
これが本当にきつかった。
「行きたくないなら行かなくていいんだよ」と伝えながら、たぶんプライドがあったり決められたことをしなければと思う生真面目さから外れられなかったりするのだろうとも考える。
とにかく後悔するのでは困るから、行かなければ留年だもんねという可能性も確認する。
起きないのを起こし、今日は行くのかと訊き、間に合うのかひやひやしながら自分の支度もする。
弁当を作るのが無駄になったり、ならなかったり。
重い足取りの後ろ姿を見送るのもきつい。
小6の妹のB子も学校に行ったり行かなかったり、支援教室に迎えに来てもらったり、でなければ私の母に頼むなどの手配も。
職場への遅刻が増えて注意される。業務に大きな支障が出るほどではないと思うし、事情は伝えているし、仕事は半端ない量をがんがんこなしているので大目に見てほしいけどそれは虫が良すぎる話ということらしく。
そういうどうしようもない事情も吸収するために世の中には時間単位で有休使える会社もあるんだけどな、と悔しがりながら、遅刻したくないので車を飛ばすのも恐ろしくストレス。
臨機応変、も、限度がある。
初診
初診は10月半ば。
そこに至るまでで「休んでも大丈夫な日数」はほぼ使い果たし、出席日数はもうあんまりあとがなかった。
医師に、今話題の「ゲーム障害」だと思うんです、スマホを手放せず、不登校となり、昼夜逆転です、と伝えたら、
「入院をお勧めします」とのこと。
ほーらほらほら、やっぱりね~、思い過ごしじゃなかった、ものすごい重症なんじゃない!と私は内心小躍り。
E太がゆるゆるしながらも優等生をしていた中学時代を知る大人たちからは、私を励ますつもりで「心配しすぎじゃない」「そのうちあきるでしょ」など、軽く見積もりたい、楽観的でいたい気持ちのこもったコメントももらっていたのだけど、私はちっともそんな気になれなかった。ハマりすぎる性格を知っているから当初からずっと危機感を持っていたし、第一、実際生活を共にする立場としては、ほんとに荷が重すぎたから。
それを認めてもらえた気がしたので。
でも、もちろん、E太にそんなそぶりを見せたら不機嫌になるに決まっているので、極力抑えはした。
いきなり入院といわれて、本人はさすがに「え、そんなレベル?」とショックだったと思う。もちろん、いらっと拒否。
しかし医師は、「未成年なので保護者の同意さえあれば入院は可能です」とおっしゃる。
「何より物理的にスマホから離れることが必要ですので。最低でも1ヶ月から、長くて3ヶ月ほど入院すればよくなります」と。
私にとって、ここで「すぐさまお願いします」というのはすごく魅力的ではあった。家でお互いいらいらと対峙しているよりも離れたほうがいいだろうし、そのうえデジタルデトックスもしてもらえる。
しかし、である。
具体的にイメージしてみると、それで果たして万事片付くだろうかと不安にもなる。
E太は私に割と従順に過ごしてきているが、それは、私のいうことに納得しているというよりは「無駄なことはしたくない」というのが第一にあるからにすぎない。内心納得していなくても、「母がダメと言ったらそう簡単に許されることはない」という経験則があるから「めんどくせ」と思いながら要望を引っ込めてきたのだと思う。
もちろん、納得してくれている話もあるし、中学校では親の協力がないと部活もできないうえ日程的にもハードなので、お互い衝突している暇もなかったというのもあるが。
今回のスマホに対する執着は、そういった「めんどくさい母親」に、彼がこらえてきたものを爆発させて、精一杯自己主張をして必死に表現して手に入れたゲームの世界での居場所に対する執着なのである。
「ゲームの時間を制限しなさい」「夜は寝る時間だからスマホは預けなさい。それが嫌ならルーターを預けなさい」など、話し合おうとしたり、どこでなら納得してくれるのかとあれやこれや提案をしてみたりしたけれど、とにかく管理されることすべてにNOと固い拒絶を示してきたE太。
私でなく医師という専門家にいわれたというところには説得力があるとはいっても、だからといって「はいそうですか」とはならない。そして、デジタルデトックスがなされたとしても、退院後にまた恨みを込めて再度ハマっていく未来が見えるような気もする。
そして本人の同意なく入院させたりしたら、その恨みはずっとこちらに向いて、E太が忘れることはないだろう、と思う。私としてはここは本当に怖い。実際、この子結構恨み深いな、と閉口した経験があるので。
医師は、またハマることもありますが、また入院するのも嫌なので調整できるようになりますよ、などとおっしゃるが、ちょっと考えたほうがいいなと感じた。
あの、ヤブ医者からの帰り道に見つけた本には、本人の納得が大事とあって、そこには私もそうだろうなと思ったのもあって、二の足を踏んだ。
実際、入院費用も気になるし、第一、高校の出席日数の問題もある。
医師からは、入院のために出席できない場合に、レポート提出で出席と認めるなどの対応をしてくれる学校もあるので、確認してみてくださいといわれた。
高校の反応
その足で早速高校へ行き、相談したが、「前例がないのでできません」との回答。
最大限善意に解釈すれば、E太が登校するように背中を押してくれようとしたのかもしれない。
実際、入院したくないというか絶対にスマホを手放すつもりがないE太は、「これからちゃんと登校します」と宣言。
それでうまくいくのならもちろん構わない。
しかし、医師から入院が必要といわれているのだから、そちらに協力する手立てが学校にないというのは、どうなのと思う。
私がひっかかっているのは、「ICT教育」でタブレットやスマホを活用するのだといって、生徒たちにもスマホを持つ口実を進んで与えているにも関わらず、スマホ依存になった子が出ても「前例がないのでできません」はあんまりじゃない?というところ。
高校のせいでスマホ依存になった、とまでは言わないし、「高校がつまらない」とE太が感じたことの全責任が先生方にあるわけでもない。しかし、まったく関係ないわけでもないじゃない?
それに、今後スマホ依存の子はさらに出てくると思う。まさかうちの子が最初で最後ということにはならないだろう。
とにかく、スマホを持つ前から、ハマることの恐ろしさに危機感を持ち、ことあるごとにできる限りのことをしてきたうちの場合でも、初診は不登校になってから3ヶ月後となり、その間にも依存は深まり、いざ受診して入院が効果的ですと医師に言ってもらえても、留年したくなければいやでもなんでも学校に行くしかない。診察は平日午前しかしてもらえず、平日午前に行って心理検査を受けて診断がつかなければカウンセリングも受けられない。カウンセリングまでたどりつけば祝日や土曜日や平日午後の対応も可能なのだが。
つまり、うちの場合は、治療は棚上げ。
なんか色々詰んでるんです。追い詰められた上さらに追い詰められるというか。救いがない。
網の目、大きいな・・・
ここ、社会の問題じゃない?と思う。
思春期外来の初診の予約がなかなか取れないというのは、もともと用意されてる初診の枠が少なすぎるということで、つまり、ニーズに対応しきれてない。
都市部では病院も多くあり、さらに関東になれば最先端のノウハウが実践されているが、それが地方に波及するには時間もかかるし、時間が経ったからといって必ず波及するわけでもないんだろう。
こういうところで地域格差をひしひしと感じる。
地方の車社会では、娯楽が少なく、子どもがひとりで外出もしづらく、送迎のために必要ということで小中学生のスマホやタブレット保持率が高い。持たせることの弊害について警戒する親もあんまり多くないような印象。確かにハマるかハマらないかは子どもの性格とか特性によると思うので、家庭によってはまったく心配いらないところもあるだろう。
しかし、ハマってしまう子は確かに存在しているので、もうちょっと救いの手が迅速に届くのでないと、厳しいなと思う。
私の場合、最初っからオープンにしてあちらにもこちらにも話しまくり、調べまくり、動いて電話して、相談してきてるんだけど、いくら求めても、届かない。
網の目にひっかからないなら、どうぞ、落ちていってください、さようなら、といわれているような気分になるのだった。
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